認知症基本法の理念(第三条)には、 認知症施策は認知症の人が尊厳を保持し、 希望を持って暮らすために行うとあり、その第五項に「認知症の人のみならず家族等に対する支援により、 認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むことができる」とされています。 また、第三章 基本的施策の中で具体的な家族等への支援の内容として明記されている部分は、 第一九条 相談体制の整備等に「国及び地方公共団体は、関係機関及び民間団体相互の有機的連携の下に、 認知症の人又は家族等からの各種の相談に対し、個々の認知症の人の状況又は家族等の状況にそれぞれ配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするために必要な体制の整備を図るものとする」、 「国及び地方公共団体は、認知症の人又は家族等が孤立することがないよう、認知症の人または家族等が互いに支え合うために交流する活動に対する支援、 関係機関の紹介その他の必要な情報の提供及び助言その他の必要な施策を講ずるものとする」と明記されています。
認知症という疾患や症状にまつわる様々な迷信や偏見は、残念ながら私たちの暮らしの中に未だ多くあります。 そのような迷信や偏見を持つ人が、認知症に罹患したり、その家族になったとき、適切な対処が遅れがちになったり、 認知症の人の尊厳が著しく傷つけられたりする可能性があります。認知症の人自身はもちろんのこと、家族等が持つ迷信や偏見は、 認知症の人の生活を脅かすことになります。認知症に対する正しい知識と理解が持てるよう、家族等は適切な教育的支援を受けることが望まれます。
上記の法文にある、認知症の人または家族等の当事者に対する対策には、次の事項があります。
ここで「孤立」という文言があるのは、令和5(2023)年5月に成立、 6月に施行された「孤独・孤立対策基本法」に関連しています。 また、 高齢者虐待防止法に規定される5つの虐待行為に、 最近「セルフ・ネグレクト」への措置も、生命・身体・財産に重大な危険が生じる恐れがあるとして、 注意喚起に加わりました(国マニュアル)。 孤立や孤独は自尊感情の低下やセルフ・ネグレクトに繋がりうる、注目すべき状態です。
家族等も、認知症の人との生活に悩むときに「どうして自分だけ」「誰もわかってくれないだろう」と孤立しやすく、 認知症の人に近いからこそ早期に支援をしていくことが認知症の人の支援につながります。 このような観点を、認知症基本法における家族支援から読み取ることができます。
北川 公子(プロジェクト委員会委員長、共立女子大学)