プロジェクト委員会
第2回 認知症基本法の基本理念(2024年12月04日)
認知症基本法の第3条には、7つの基本理念が示されています。
この基本理念に目を通すと、真新しい内容が示されたわけではないと思われるかもしれません。しかし、2012年「今後の認知症施策の方向性について」報告書とオレンジプランの策定以降の「G8認知症サミット」(2013年)、「日本認知症本人ワーキンググループ」発足(2014年)、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定ガイドライン」(2018年)、「認知症施策推進大綱」(2019年)と、2004年の名称変更の際に言われた「認知症新時代」以上に多くの提案がありました。この2010年代の最大の特徴は、認知症の人ご本人からのメッセージが強く発信されたことです。これまでが「周囲が困るような認知症の人の言動にどのように対応するか」という思考プロセスだったとすれば、現在は「まず本人の希望を聴き」、そのうえで「認知症の人が生活するうえで障壁となるものをいかに解消するか」という考え方が求められます。
立ち位置が大きく変わったことを念頭に、以下の基本理念を読んでみてください。
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全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができるようにする
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国民が、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めることができるようにする
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認知症の人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものを除去することにより、全ての認知症の人が、社会の対等な構成員として、地域において安全にかつ安心して自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、自己に直接関係する事項に関して意見を表明する機会及び社会のあらゆる分野における活動に参画する機会の確保を通じてその個性と能力を十分に発揮することができるようにする
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認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供される
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認知症の人に対する支援のみならず、その家族その他認知症の人と日常生活において密接な関係を有する者に対する支援が適切に行われることにより、認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むことができるようにする
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認知症に関する専門的、学際的又は総合的な研究その他の共生社会の実現に資する研究等を推進するとともに、認知症及び軽度の認知機能の障害に係る予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方及び認知症の人が他の人々と支え合いながら共生することができる社会環境の整備その他の事項に関する科学的知見に基づく研究等の成果を広く国民が享受できる環境を整備する
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教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉その他の各関連分野における総合的な取組として行われる
(厚生労働省:共生社会の実現を推進するための認知症基本法 第3条)
北川公子(プロジェクト委員会委員長、共立女子大学)
※認知症基本法に関連するサイトにリンクを設定しましたので、ご活用ください。