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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.28

Vol.27

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Vol.2

Vol.1

Vol.28-1
家で暮らしたい,を支えるための外来支援を目指して
2012年認定 認知症看護認定看護師
公益財団法人日産厚生会玉川病院
山﨑 美樹

プロフィール写真

私は認知症の方の「自宅に帰りたい」というご本人が望む場所に退院支援を行いたいと考え,2012年に認知症看護認定看護師の資格を取得しました.当時勤務していた回復期リハビリテーション病院では,病棟で回想法を実施したり,院内デイケアを立ち上げたりしました.また,地域包括支援センターと協働し,認知症予防教室などで地域の方と交流を深めながら,オレンジカフェ運営ボランティアも経験してきました.
 現在は急性期病院に勤務し,認知症ケアチームを立ち上げて活動をしています.当院の認知症ケアチームは医師・看護師・薬剤師・社会福祉士・作業療法士が中心となり,認知症ケア委員会の中核メンバーの役割も担っています.
 立ち上げ当初は認知症ケアチームの存在が院内に周知できず,病棟ラウンドに行っても「特に困っていません」と言われることのほうが多い状況で,薬物療法が中心でした.非薬物療法の重要性を浸透させるためにDCNが中心となって,リンクナースとともに病棟でリアリティオリエンテーションやコミュニケーション技術などのミニ勉強会などを繰り返し実施した結果,非薬物療法の重要性の理解と認知症ケアチームの活動が浸透していきました.現在は認知症ケア委員会のリンクナースに,各病棟の身体拘束率や認知症ケアチームラウンドの対象者のピックアップなどを任せています.そして認知症ケアチームはGCNSが中心となり活動しています.
 私自身は認知症ケアチームで介入した患者さんの退院後の生活をフォローできるよう,外来支援のシステム作りに取り組み始めたところです.外来支援に力を入れたいと思ったのは,認知症ケアチームで介入し,家族との面談を行うことで施設入所から自宅退院になった患者さんを,外来で長期にわたってフォローした経験がきっかけでした.外来受診時にご本人と介護しているご家族の話を伺い,家の中で起こっている困りごとの解決方法をご家族と一緒に考えながら,ご本人が亡くなるまで数年にわたり支援しました.「自宅でみるのは大変だったけど,病院に来たら愚痴も言えるし,困ったことは一緒に考えてくれるし,連れて帰ってよかったです」と,最後にご家族に言われた言葉が今でも忘れられません.介護や医療のサービスを調整するだけではなく,ご本人と家族が来院された時に声をかけ,両者の話を聞いて,今困っていることを解決するにはどうしたらいいか一緒に模索することが,自宅での生活を継続するうえで重要だということに改めて気付かされました.認知症は他の疾患と違い,採血などの検査結果から病状の変化をアセスメントし,助言によってすぐに生活習慣が変化するなどの結果が出るものではありません.現在は他の分野の認定看護師から服薬管理や生活習慣の変化に対してどのようにアドバイスをしたらよいかと相談されたり,認知症ではないかと感じながら,どう介入したらいいのかわからないと他職種のスタッフから相談を受けるケースもあります.入退院を繰り返す患者さんのケースにおいては前回の認知症ケアチーム介入時の看護ケアが継続され,患者さん自身の困りごとが早期に問題解決できるよう外来から病棟まで,シームレスに認知症ケアが行われることが重要だと考えています.
山﨑 美樹(やまさき みき)
2012年 認知症看護認定看護師取得
2018年 公益財団法人日産厚生会玉川病院に勤務
Vol.28-2
老人看護専門看護師認定からの4年間の活動を振り返って
2020年認定 老人看護専門看護師
筑波メディカルセンター病院
石井 智恵理

プロフィール写真

当法人は1985年のつくば科学万博の開催時に設立され,地域医療支援病院として救命救急センター及び茨城県地域がんセンターを擁する高度急性期医療を担っています.
 2020年に老人看護専門看護師(以下GCNS)認定を受けた私の活動は,新型コロナウイルス感染症の波と共にスタートしました.コロナ専門病棟に配属当初は,厳重な感染対策下であり,経過の見通しや隔離環境への不安を抱く様々な年代の患者に対応していました.うなずきや身振り,目で笑顔を作ること等で共感を示し,温かさが伝わる関わりを大切にしながら身体管理を行ったことは,高齢者看護の実践そのものであり,看護の基本だと強く実感しました.
 認定当初は自分を不甲斐なく思う気持ちが大きくありました.しかし,「自分らしく看護の基本に忠実に高齢者看護を実践していこう!」との思いを胸に,認知症ケアチームの活動を基盤に各病棟へ足を運びました.認知症高齢者の手術では術後に合わせて訪問し,せん妄患者には夕方に再度訪問する等相談しやすい環境を意識しました.ケアの拒否が強い認知症高齢者では,スタッフの話に傾聴しつつ,「この方はこんなことに困っていたのでは?」「この身体的状態ではきっと苦しいよね」と,高齢者自身の困り事や行動の背景に目を向け,高齢者の不安や苦痛をスタッフと一緒に捉えなおし,関わり方を見せて実践を示していきました.認知症高齢者やスタッフの関わりの変化は逃さずポジティブフィードバックし,スタッフの成功体験につなげていきました.高齢者の身体的・精神的苦痛に対処していくことが大切であることを地道に示してきた日々の活動により,GCNSとして信頼され,相談が増えていきました.2023年度からは身体拘束最小化プロジェクトチームのリーダーを任されています.また,身体拘束の対象になりやすい認知症高齢者の理解やせん妄対応,看護倫理の研修を開催し,各委員会や病棟に出向き,高齢者の尊厳を守るため,身体拘束最小化の考え方や対応等を周知したことにより.それにより,外来や小児病棟,在宅部門からも一緒に考えていきたいと声をかけられるようになりました.活動はセラピストや介護士との組織的な取り組みの輪にも広がっています.
 身だしなみを自然に整える等の日常ケアや,高齢者の尊厳を守りながら治療する環境提供を大切にし,多職種で配慮できる組織作りの一部を担えるよう,今後も精進していきたいです.
石井 智恵理(いしい ちえり)
看護師免許取得後、北里大学病院に入職
2005年 カナダへ語学留学
2007年~筑波メディカルセンター病院に勤務
2020年 老人看護専門看護師認定