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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

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Vol.33-1
特別養護老人ホームにおける認知症ケアの課題―その人らしく生活するための多職種連携―
特別養護老人ホーム明風園
生活支援グループ サブリーダー/2017年 認知症看護認定看護師
松村まり子

松村まり子プロフィール写真

 私は特別養護老人ホーム明風園(以下,特養)に配属になり,2017年に認知症看護認定看護師の認定を受けました. 特養は,要介護3以上で常に介護が必要な利用者が対象の施設です.看護職員配置が少なく,常勤の医師もいないため, 病院のような医療提供には限界がありますが,視点を変えて考えると,利用者の日々のQOL向上のために限られた医療資源を活用し, 生活機能の維持・向上に焦点をあてた看護やケアができると言えます.
 Aさんは90代後半の女性で,要介護度5の認知症の利用者です.自宅では大家族に囲まれて生活し,ご自身の意向よりも家族の意向を尊重される方でした. 入所後は感染対策の観点から,発熱する度に他の利用者との生活から隔離され,ベッド上で過ごしました. Aさんは発熱時には,関節痛の症状と食事摂取量低下がありました.発熱の原因を探る採血では腫瘍マーカーが高値であることがわかりました. Aさんの意思は確認できませんでしたが,代弁者の家族に説明したところ,精査は身体の侵襲が大きいとの理由から希望はありませんでした. そこで,今後の対応について多職種カンファレンスを開催し,ADL低下予防とQOLの観点から定期的に解熱鎮痛剤を内服する方針を決定しました. その後,Aさんは解熱鎮痛剤使用により,時折微熱はありますが,他の利用者と一緒に食事や入浴など,人と触れ合う生活を送っています.
 認知症の利用者は,ご自分の症状や状態を伝えることが難しくなり,更にマルチモビディティ(多疾患併存)のため症状が多様であることから, フィジカルアセスメントが重要です.その点で多職種協働は必須であり,特に介護職との協働が不可欠となり, 日頃より,お互いの保有している知識と技術を共有し,認め合う人間関係の構築が大切です. そのためには自ら多職種に対して真摯な態度,傾聴,声掛けなどを行い,意見交換がしやすい環境を作り,認知症の人が,その人らしく生活するための多職種連携をしていきたいと思います.
松村 まり子(まつむら まりこ)
看護師免許取得後、総合病院に勤務
1998年 群馬県社会福祉法人 社会福祉事業団に入職 障害者施設を経て特別養護老人ホームへ異動
2017年 認知症看護認定看護師の認定を受ける 現在特別養護老人ホーム明風園にて勤務
Vol.33-2
治療を受ける高齢者の身体的拘束による苦痛を減らし,生活の場へつなぐ急性期医療をめざして
川崎市立川崎病院
老人看護専門看護師
鳥海 幸恵

鳥海 幸恵プロフィール写真

 私が勤務する川崎市立川崎病院は,神奈川県川崎市南部医療圏の地域医療中核病院です. 私が老人看護専門看護師(以下,GCNS)として最も大切にしてきたことは, 状況の理解や変化への適応が難しい高齢者に生じる様々な心身の苦痛と混乱を極力減らし, 治療終了と同時に生活の場へ戻れるよう,心身の機能を維持するケアの普及です.
 看護師経験4年目で,慢性期医療中心の系列病院から当院に異動した際,治療のための様々なデバイスを抜いてしまわないよう, やむなく身体的拘束が行われている多くの高齢患者さんを目の当たりにしました.どの様な看護技術や, 医師をはじめとした他職種とのコミュニケーションの技術があれば,身体的拘束を行わずにケアできるのだろうか. 高齢患者さんが少しでも早く身体的拘束を必要とする状態を脱するために,どの様な治療上の調整や意思決定支援が必要だろうか. もっと学んで急性期医療の場の高齢者ケアを変化させたい.それが,私がGCNSを目指した原点です.
 大学院修了後,まず自部署で活動を開始しました.入院前の生活を踏まえた心身状態を丁寧にアセスメントし,「できること・強み」に注目すること. 状況理解を促すケア,自分でできることを増やすケアにより,身体的拘束を行わずにケアすること,少しずつ外していくこと. それらを実践で示し,ロールモデルとなるよう日々の業務を行っていきました. 認知症ケア委員会では,ケアの具体的場面を寸劇を通して提示し,多職種で治療・ケア計画を検討する研修会を実施するなど, 「身体的拘束をしないことによる生活機能を維持回復するケア」の普及を図ってきました.
 現在は身体的拘束最小化委員会に所属し,認知症ケアチーム専従認定看護師とともに,代替ケアの普及に取り組んでいます. また臨床倫理コンサルタントとしても,身体的拘束を伴う治療が続くケースに関する,医療者のもやもやについて相談を受け, 少しでも早くその方が望む生活の場への復帰を実現する方策についての検討を支援しています. ご自身のことを代弁してくれる身寄りのない高齢者が多い地域でもあり,当院看護師がその方の代弁者として,最後の砦となる場面も多く経験します. 時間が限られる中でも対話を重ね,院内多職種・地域ケア従事者の皆さんと一緒にその方の最善を考えていくことにやりがいを感じています.
鳥海 幸恵(とりうみ ゆきえ)
大学卒業後、一般企業に就職.29歳で転職を決意.
2009年看護師免許取得.川崎市立井田病院・川崎病院勤務を経て2017年千葉大学大学院修了、老人看護専門看護師認定.以後、川崎市立川崎病院で活動中.