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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

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Vol.29-1
医療・ケアチームで行う認知症高齢者の透析療法選択にかかわる意思決定支援の実践
2015年認定 認知症看護認定看護師
東京慈恵会医科大学附属病院 看護部
赤間 美穂

赤間 美穂プロフィール写真

当院は特定機能病院であり高度な医療を提供する役割を担う病院です.私は2015年に認定看護師の資格を取得し,2016年から認知症ケアチームの専任看護師として活動をしてきました. その活動の中で認知症高齢者が透析療法を受けるときに身体拘束や薬物による鎮静をされている現状の多さを目の当たりにし,ご本人の意思に沿った透析療法選択の意思決定支援の必要性があると感じました.
 認知症高齢者の治療選択にかかわる意思決定支援の際に,医療者がついやってしまいがちなのは認知症高齢者の意思はあまり聞こうとせず,家族と共に決めてしまうことです. ここに課題を感じたため,まずは認知症高齢者から意向を聞いてみようと行動しました.その意向とは透析をするかしないかではなく,本人の大事にしていること,今後どんな生活をしたいかなど, 毎日のようにベッドサイドに伺い雑談を通して,高齢者の人生の物語を聴きました.その話の中で,例えば「苦しくないように生きたい」というような言動があれば, 透析療法は体のゴミや余分な水を外に出すことによって苦しくなくなるなど,理解しやすいように説明を行いました.そして認知症高齢者の体調の良い時期を見計らって訪室し, ご自身の意向を話しやすい環境作りにも心掛けています.また,認知症高齢者から発信されるバーバルメッセージだけではなく,表情やしぐさ, 口調などのノンバーバルメッセージにも注目して本人の意思を推察することを大切にしています.
 この実践は,ケアチームだけではなく医療チームとも協働して行っており,その実践がSDM(shared decision-making:共同意思決定)に繋がっていくと考えています. 意思決定支援においての看護師の役割は,まずは認知症高齢者を深く知ること,そしてその知り得た思いや考えを確認・代弁していくことだと考えています.
 今後も認知症だから・・とあきらめてしまうかもしれない医療を認知症高齢者の意向に沿った医療が受けられるように支援していけたらと考えています.
赤間 美穂(あかま みほ)
1995年 東京慈恵会医科大学付属柏病院就職
2001年 東京慈恵会医科大学附属病院へ移動
2015年 認知症看護認定看護師資格取得
2022年 東京慈恵会医科大学大学院 地域連携保健学 老年看護学 修士課程修了
現在、東京慈恵会医科大学附属病院 精神神経科病棟・外来 看護主任 認知症ケアチーム専任看護師として働く
Vol.29-2
精神科病院において高齢者理解やより良いケアの輪を広げる活動
2020年認定 老人看護専門看護師
山口県立こころの医療センター
光貞 美香

光貞 美香プロフィール写真

 山口県立こころの医療センターは,精神科救急入院棟,精神科リハビリ・依存症治療等入院棟,認知症疾患医療センターなどを有し,県内精神科の拠点病院としての役割を担っています. 私は,2020年に老人看護専門看護師の認定を受け,精神科救急入院棟に所属しながら教育活動や研究支援なども行っています.
 現在私が行っている主な活動としては,院内認知症カフェ(以下,オレンジカフェ)の運営と高齢者ミニ勉強会があります. オレンジカフェでは作業療法士,精神保健福祉士,公認心理士とともにプログラムを組んでおり,参加する高齢者に合わせて回想法,運動,調理,音楽,ものづくり,土いじりなどを取り入れ, 活動の中で高齢者の得意なことや持っている力を発揮していただけるような関わりを行うことで,高齢者の自尊心を高められるような関わりを意識しています. 高齢者の持っている力を病棟スタッフと共有すると「こんな一面もあるんですね」とスタッフの視点も広がるなど,活動の成果が見えてきたように感じ, 高齢者の背景・歴史をしっかり見つめていくことの大切さを実感しています.さらに,病棟だけでなく,今後の住み家でその力が活かされるために継続した関わりが行えるよう退院先の職員や地域の支援者への情報共有に努めています.
 高齢者ミニ勉強会は,月に1回30分で職種関係なく自由参加としています.堅苦しくならないようわかりやすいテーマで講義と意見交換を行っており,徐々に参加者が増えてきました. ある日の勉強会では「メガネ・補聴器・入れ歯は大事だよ」をテーマにしました.これは,当院に入院される高齢者は精神症状や認知症の行動・心理症状により自傷他害や逸脱行為に至ってしまった方が多く, 混乱した状態で隔離環境への入院となる場合があります.隔離環境では安全確保のため必要最小限の物品しか持ち込むことができず,眼鏡や補聴器などが一時預かりとなることもあり, コミュニケーションを補うために必要な物が使用できず,高齢者にとっては生活しづらい環境だなと感じていました.そこで,どの程度のどのようなリスクがあるのかを再アセスメントし, できるだけ眼鏡や補聴器など身につけていたものは継続して使用できるよう働きかけ,感覚器からの情報を補うことの大切さを共有しました.これまで当たり前として行われていたことへ疑問を投げかけることで, 高齢者の生活環境を意図的に整えることへの意識が高まってきたと感じています.
 これからも,自分にできることを地道に続けることで,高齢者の理解やより良いケアの輪が広がるよう仲間を増やしながら取り組んでいきたいと思います.
光貞 美香(みつさだ みか)
看護師免許取得後,一般病院に勤務し,看護基礎教育に従事
2020年大学院修了後,山口県立こころの医療センターに入職し,老人看護専門看護師の認定を受ける