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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.22

Vol.21

Vol.20

Vol.19

Vol.18

Vol.17

Vol.16

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Vol.5

Vol.4

Vol.3

Vol.2

Vol.1

Vol.22-1
急性期病院における特定行為研修を活用した認知症看護の実践
2014年認定 認知症看護認定看護師
国保直営総合病院 君津中央病院
高梨敬子

プロフィ-ル写真

私が勤務する国保直営総合病院 君津中央病院は、地域の基幹病院として、三次救急医療、がんや脳血管疾患などの高度医療、周産期医療、災害時医療等を提供しています。
私は 現在、消化器内科病棟に所属しながら主に認知症ケアチームの専任看護師として 組織横断的に活動しています。認知症ケアチームでの支援過程では、向精神薬が適切に使用されていないことや全身状態が不安定になりやすく薬剤の微調整が必要な場面が少なくないこと、薬物治療を行っていても、認知症やせん妄ケアが十分でないため症状緩和につながりにくいという困難点がありました。そこで、対象の身体的特徴を的確にとらえ、病態の変化や薬剤を包括的にアセスメントする力を強化したいと考え、2018年に特定行為研修「栄養及び水分に係る薬剤投与関連」と「精神及び神経症状に係る薬剤投与関連」を受講しました。研修修了後の実践では、臨床推論やフィジカルアセスメントを学んだことが強みになっています。呼吸器系の疾患で入院となった認知症をもつ患者様の不眠時・不穏時指示の薬剤投与について病棟看護師から相談がありました。その患者様は、夜間、中途覚醒した際に、混乱や焦燥から体動が活発になり酸素需要が増すことで息苦しさも増強し、さらに興奮状態になる悪循環から再入眠が困難となり、不穏時指示を2回投与したところ翌日過鎮静となってしまいました。そこで、中途覚醒時の混乱の緩和に向けたケアについて伝えるとともに、精神症状の評価や投与する薬剤の特徴から何を目的にその薬剤を投与するのかなどについて病棟看護師と共有しました。以降、中途覚醒時の混乱は減少し、再入眠できない時は、不眠時指示の薬剤を投与することで、次第に睡眠覚醒リズムが整い追加投与もなくなりました。
特定行為研修を活用し、身体疾患の合併による影響のアセスメントや精神症状の評価を合わせて行うことで、自身の思いや苦痛を的確に表現できにくい認知症をもつ患者様の全身管理や症状緩和につなげることができるのではないかと感じています。また、単に薬剤を提案・調整するのではなく、薬剤調整の目的や身体へ与える影響を看護スタッフへ伝えることで、有害事象を防ぐなど、看護の質の向上や安全な医療の提供につなげることができるのではないかと感じています。今後も、認知症をもつ患者様が、安全で安心して治療にのぞめるよう実践していきたいと考えています。
高梨 敬子(たかなし けいこ)
1996年に君津中央病院に入職し、2014年に認知症看護認定看護師の認定を受ける。2018年 特定行為研修修了(「栄養・水分に係る薬剤投与関連」、「精神及び神経症状に係る薬剤投与関連」)。現在、チーム活動を中心に組織横断的に活動している。
Vol.22-2
急性期病院で高齢者が安心して治療を受けられるために
~高齢者の意思を尊重したケアを多職種チームで実践する~
2019年認定 老人看護専門看護師
神戸市立西神戸医療センター
森本景子

プロフィ-ル写真

私の勤務する神戸市立西神戸医療センターは、「神戸西地域に根づいた安心・安全な医療をめざします」を基本理念に、神戸西地域の中核病院として救急医療、がん診療をはじめとする高度専門医療、結核医療などを提供する病院です。私は現在、入院病棟でスタッフナースとして勤務し、週2日は高齢者・認知症サポートチームの看護師として院内を横断的に活動しています。
老人看護専門看護師の認定を受けてから特に力を入れている活動が2つあります。1つ目は、入院病棟における高齢者ケアです。病棟では、高齢者が手術目的で入院をすることが多く、疼痛や急な環境の変化に戸惑い、せん妄を発症することも多くあります。そのため、病棟スタッフとともに高齢者の身体の特徴や認知機能を踏まえたケアを実施し、合併症や二次的合併症を予防して手術を無事に終えて生活の場に戻ることができるように看護実践をしています。また、週1回病棟看護師と協力して感染予防対策を実施しながら院内病棟デイケアを実施しています。デイケアの日は夕方の焦燥感が軽減され、夜間はよく休めるという高齢者にとっての良い効果が出ており、医療者も効果を実感しています。
2つ目は高齢者の治療に関する意思決定支援です。医学的には手術が必要な状態でしたが、「痛くないから、手術はあまり。食べることは好き。」と話す認知症がある高齢者と関わりました。高齢者、医療者、施設の職員で何度も検討を重ね、おいしく食べることを支えるために手術することを決定したものの、術後の身体の回復に時間がかかり、本当に手術をしたことが高齢者にとって善かったのだろうかと私自身悩むことがありました。しかし、高齢者の力を信じて医師、リハビリ職員、看護師と高齢者の目標を共有し、協力してケアをした結果、次第に回復し、「おいしいな。」と食事を食べ、元の生活の場所に戻ることができました。この事例を通じて、高齢者の意向を中心に据え、何が最善なのかを話し合い、持っている力を信じ、目標を共有してケアを行う過程が大切であると感じました。
 今後も高齢者からたくさんのことを学び、悩みゆらぎながらも活動を続けていきたいと思っています。
森本 景子(もりもと けいこ)
大学卒業後、神戸市立西神戸医療センターに入職する。消化器外科内科病棟、脳神経内科・耳鼻科・皮膚科・乳腺外科の混合病棟で勤務する。ある高齢者のケアがうまくいかなかったことがずっと心残りで高齢者看護に興味を持ち、院内留学制度を利用して大学院に進学し老年看護学を学ぶ。2019年に老人看護専門看護師の認定を受ける。