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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.31

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Vol.31-1
多職種連携を図り,本人の意思を尊重した退院調整を目指して
財団法人興和会 右田病院
2015年認定 認知症看護認定看護師
2022年認定 老人看護専門看護師
榎本 真紀

榎本 真紀プロフィール写真

 私は2015年に認知症看護認定看護師の認定を受け,認知症患者の離床を目的とし,回想法やアクテイビテイを行うことで, 入院生活を少しでも穏やかに過ごせるような環境作りを実践してきました.また,認知症高齢者が安心して居宅で暮らすことができ, さらに高度な知識・技術を身につけて看護実践ができるように,2022年に老人看護専門看護師の認定を受け, 現在,右田病院地域連携室で退院支援・調整に従事しています.
 認知症高齢者は,骨折や何らかの疾病の発症で身体的な苦痛を伴うことや,環境の変化に適応することが難しいとされています. また,さらなる認知機能の低下やせん妄,うつ状態からADLの低下に繋がり,自宅での療養生活が困難になってしまうことが多く, 入院時から早期に介入し在宅に戻れるよう支援,調整することが重要です.
 私が日々の業務の中で大切にしていることは,本人や家族との関わりを通して,本人の意思,家族の意向を確認し, 病棟スタッフと①身体状況②心理状況③生活環境④社会・家族環境の側面から退院調整に向けて,多職種と情報共有をし, 話し合いをすることです.以下に,院内外の関係機関と密に連携を図り,自宅退院となった事例を紹介します.
 アルツハイマー型認知症の既往がある80代女性のA氏は,食欲不振,リウマチによる体動困難のため入院されました. 入院時より安静臥床が長期化し,寝たきり状態となりましたが,「早く家に帰りたい」と苦悶表情が続いていました. しかし,家族は「日中夫婦二人だと心配.もう少し自分のことができればいいですが,今の状態では厳しいです.」 と難色を示されました.そこで,本人,家族,ケアマネジャー,病棟スタッフ,セラピストでカンファレンスを開催しました. カンファレンスでは,本人の思いを実現するために,介護保険の区分変更,リウマチ科のある訪問診療, 訪問看護やデイサービスの継続の提案をしました.また,家族の介護負担の軽減のため,訪問介護やレスパイト利用などの提案を行いました. A氏に対しては,在宅生活を見越した食事形態の変更やリハビリを実施したことで,当初自宅退院に難色を示された家族も, A氏の表情が明るくなっていくことを目の当たりにし,自宅退院の方向に理解を得ることができました. さらに退院まで「リハビリ頑張るんだよ」という家族の言葉が励みとなり,リハビリを継続することができました. また家族もカンファレンスの開催をきっかけに,A氏の在宅生活の具体的なイメージが安心につながり,A氏は自宅退院することができました. そして,退院時のA氏の笑顔は私にとって心の支えとなりました.
 今後も本人の意思を尊重することや,地域との連携を継続していくことが私の課題であり,顔の見える地域の各連携会に参加しながら, 地域向けに認知症ケアに関する勉強会の開催や,院内外の多職種と連携を図り,本人の意思決定を支援し, 認知症高齢者が在宅に戻れるよう活動していきたいと考えます.
榎本 真紀(えのもと まき)
2015年に認知症看護認定看護師の認定を受ける。
2022年に老人看護専門看護師の認定を受ける。
現在は、財団法人興和会 右田病院の地域入退院支援室所属
Vol.31-2
高齢者が最期まで安心して生活できる地域を作りたい
伊勢崎市地域包括支援センター北・三郷
老人看護専門看護師
相場 健一

相場 健一プロフィール写真

 現在,私は保健師として地域包括支援センターに所属しています.地域包括支援センターの4つの役割(①総合相談支援,②権利擁護支援,③介護予防ケアマネジメント支援,④包括的・継続的ケアマネジメント支援)と保健師の役割を鑑みて, 1)地域に住まう高齢者の生活習慣病などの疾病予防とコントロールに努め健康寿命の延伸を目指す,2)認知症を有する高齢者の相談場所と居場所を提供する,3)地域住民ができるかぎり住み慣れた地域で住み続けられるよう支援することを目標にして活動しています.
 具体的に上記記載の目標1)としては,地域に住む高齢者に対して公民館や住宅で行われるミニデイサービスや居場所に出向き,健康チェックと健康相談を実施し,かつ,自身が指導者資格を持つ貯筋運動を広め,フレイル予防に取り組んでいます. 2)としては,相談を受けている認知症高齢者に対してアセスメントを行い,家族に望ましい対応方法を伝えています.また,認知症カフェを①認知症の理解促進,②認知症高齢者への居場所の提供と家族支援,③地域住民やボランティアへの活動の場の提供を目的に毎月開催しています. 現在,認知症高齢者を含む25名前後の参加があり,ボランティアと協働し,懐かしい歌の歌唱,貯筋運動,レクリエーション,健康講話を行っています. 3)としては,1人暮らし高齢者を支援する「見守り訪問」を行い,身寄りのない高齢者と繋がりを作ることで早期介入や緊急対応に備えています.
 今後の私が目指す活動では,今後の共生社会の実現に向けて,認知症高齢者の行動が「問題」と扱われるのではなく,「チャレンジ行動」と言われるように,地域住民の認知症に対する受け止め方が「新しい認知症観」としてポジティブに変わる必要があると考えており, 他の専門職らと協働して地域へ出向き,発信していきたいです.そして,ACPを普及することにより高齢者が自分の思いを実現できるよう活動していきたいと思います.
相場 健一(あいば けんいち)
2002年看護師保健師免許取得後、群馬大学医学部附属病院に入職
2009年群馬大学大学院へ進学し保健学修士を取得
2011年公益財団法人脳血管研究所介護老人保健施設アルボースへ入職
2016年老人看護専門看護師の認定を受ける
2022年同法人が市から委託を受けて運営している伊勢崎市地域包括支援センター北・三郷へ保健師として異動となる