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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.26

Vol.25

Vol.24

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Vol.2

Vol.1

Vol.26-1
「認知症の人と家族にとっての優しい街づくりを目指して」~訪問看護の現場から~
2017年認定 認知症看護認定看護師
おかもと訪問看護ステーション垂水
信川 千賀子

プロフィール写真

私は,「もっと早い予防の段階から介入し,軽度の認知症の人(以後本人と略す)を取り巻く人的環境を多職種チームで整えたい」と考え,ケアの現場を病院から在宅へと移行したのが7年前です. 現在は,訪問看護ステーションに在籍しています.
 在宅では認知症と気づかずに様々な苦悩を抱えながら日常生活を送っている本人と家族が暮らしています.ごみ屋敷となり近所から相談が上がってくるケース,警察やスーパーで保護されるケースもあります. 重度認知症,独居のガン末期のケース,事故を繰りかえすが免許を返納できないでいるケース,ギャンブル依存で娘の大学資金も全て使ってしまったケースもありました. また,認知症とわかっていても家族は受容できず他者にも話せず自分達でなんとかしようと疲弊してしまう…負のスパイラルが回り始めると,病気であることも家族であることも遠のき, やがて虐待につながってしまうケースもありました.家族が目の前の現象は本人の心の声と捉え,その奥にあるものは何かを考えられる,まだゆとりのある段階から関わりサポートする必要がありました.
 現在の私の活動は以下5点です.
 ① 本人に困りごとが出現したときには多職種チームで丁寧に紐解いていく作業を行い本人が持つ強みを活かしたポジティブパーソンワークを展開していくこと
 ② 本人と家族の困りごと,症例と関わり,成功体験を外部に伝えていくこと
 ③ 地域の医療介護サポートセンターで〈医師会・薬剤師会・歯科医師会・ケアマネ会・訪問看護・ヘルパーステーション対象〉認知症看護の現状と成功体験を伝え協力者の輪を拡大すること
 ④ 協力者の内発的な動機付けを行うこと
 ⑤ 地域の茶話会や,民生委員,老人会などで「認知症と物忘れとの違い」「認知症予防について」を説明し事例を通して認知症の人への声がけが自然な形で行えるようになること
 ⑥ 元気な時期から自分史をメモすることを勧めること
 たくさんの人の研ぎ澄まされた感性で認知症の人の瞬時の輝きを捉えていけるチーム力とケア力は,まさに認知症の人にエネルギーを逆に頂いている瞬間だと感じています. これからも認知症の人の理解者を増やし本人と家族にとって優しい地域を目指したいと思います.最後に私がいつも前を向いて認知症ケアについて考え実践できるのは,大切な仲間がいるからこそと感謝しています.
信川 千賀子(のぶかわ ちかこ)
2001年 認知症疾患(旧 痴ほう疾患)専門病院看護師長として就任.
2004年 認知症研究研修センターで認知症介護指導者研修に参加.他職種と共に認知症ケアを学ぶ中,自身の認知症看護の視野の狭さを痛感する. その後,神戸市認知症介護指導者として認知症介護実践者研修・リーダー研修の企画・運営・講師を務める.
2011年 認知症ケア上級専門士取得
2017年 認知症看護認定看護師取得
2019年 おかもと訪問看護ステーション垂水管理者に就任.
Vol.26-2
”その人らしく最期まで生きる” を支える老健施設での活動~CureとCareの融合を地域連携・多職種協働で~
2017年認定 老人看護専門看護師
社会福祉法人栄和会 介護老人保健施設あつべつ
中川 真奈美

プロフィール写真

北海道の中核,札幌市にある「あつべつ」は近隣や道内の医療施設・在宅支援機関と連携し,超強化型老健として高齢者の生活を入所・通所・訪問の3本柱で支援しています. 初動からゴールを見据え,在宅復帰から看取りまで幅広いニーズに対応するよう多職種を巻き込み,専門性を引き出す調整役が重要な責務と考え活動しています.
 がん拠点病院で勤務する中,つらい治療に身を置く多くの高齢者と出会い,次第に高齢者が疾患や障がいを抱えていても,共存しながらエンドオブライフを豊かに生きるための看護を目指したいと思うようになりました. 治療にのみ特化するのではなく,生活者としてその人らしさに視点を当てたCure(疾患治療) とCare(生活の質を高める支援)の融合を目指し,自法人での活動が20年を迎え感慨深く思います.
 「あつべつ」は100床中,認知症専門棟50床を有し,認知症自立度Ⅲ以上73%とその割合は年々増加しています.認知症疾患,慢性心不全,慢性腎臓病,がん疾患を抱える方,100歳を超える方の支援が増えており, QOLと尊厳を大事に過不足のない適切なCureと個別Careの重要性を痛感しています.そして,高齢者との関わりから感じ取る微細な反応を多職種で共有し,大切に繋いでいくことを大事にしています. 日々の生活支援を通して,多職種の倫理的感受性が高まるよう「気づき(倫理的課題)」を動機付けし,多職種が共に考え意見を交わし,解決までのプロセスを大事に支援しています. 実践の成果をフィードバックすることで自信となり,協働意欲の向上に繋がっています.
 感染症や骨折等の急性疾患,基礎疾患の重度化から,ACPにより医療施設でのCureを選択する場合は,治療目標を医療施設と十分に相談します. 入院が長期化しないよう受け入れ体制を多職種で整えることで,老健の場での継続的なCure と連続性のあるCareが可能になると実感しています. また,高齢者個々の状態像に応じ,看取りまでの日々丁寧な支援は「あつべつ」の強みと確信しています.
 今後も,“その人らしく最期まで生きる”を支えるチームの一員として,地域連携・多職種協働の充実を目指し,老健の場からGCNSとして研鑽を重ねていきたいと思います.
中川 真奈美(なかがわ まなみ)
北海道がんセンターに勤務し,看護管理経験の後2003年社会福祉法人栄和会入職.介護老人保健施設あつべつで高齢者看護に従事し,地域包括支援センター開設にも参画.2017年老人看護専門看護師取得,2020年より副施設長.
札幌医科大学,北海道医療大学臨床教授.看護大学・大学院,福祉専門学校,高齢者介護施設,一般市民対象の高齢者ケア,認知症ケアの講師としても活動している.