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IAGG活動報告
神戸市立看護大学 蒲谷苑子
蒲谷苑子

 私は,2023年6月12日から14日の3日間,神奈川県のパシフィコ横浜で開催された12th International Association of Gerontology and Geriatrics Asia/Oceania Regional Congress2023に参加しました.IAGGは世界65か国以上に73の会員組織があり,医療や行政などの様々な専門家で構成されている老年学を推進する学際的かつ国際的な組織です.

 仕事の関係で12日のみの参加となりましたが,ICTやAI等を活用することで,高齢者の豊かな生活に寄与できるような研究活動を実施していきたいと考えており,特にGerontechnologyのシンポジウムを楽しみに参加しました.シンポジウムのなかでは,海外の介護施設でのロボット技術を活用したケアの取り組みや,客観的データと主観的データを統合した包括的なアセスメントツールの国際的な共同開発など,様々な先駆的な取り組みが紹介されていました.高齢者の生活を支えるテクノロジーは日々進化しており,それらを基に他分野と協働しながら,それぞれの高齢者に合わせたケア方法の開発を行っていきたいという思いがより強くなりました.

 私は,現在博士後期課程で,先生方と共同で取り組んでいる研究の一部をポスターで発表しました「Stress Interactions Based on Care Contents between Older People with Dementia and Their Family Caregivers in the Home Setting」(Sonoko Kabaya,Chieko Greiner,Masahide Nakamura,Yuko Yamaguchi).認知症高齢者とその家族介護者は日々の生活のなかで様々な場面でストレスを感じながら生活をおくられています.今回は特にケア場面に注目して,そのなかでの両者の感じるストレスがどのように相互に作用しているのかを分析しました.関心を持ってポスターの前で立ち止まってくださった方と英語でディスカッションをする機会は,とても有意義で,更に研究を発展させていくための多くの示唆を得ることができました.

 国際学会に参加したなかで,対面で自身の研究内容について発表した経験は今回が初めてでした.まだまだ未熟ではありますが,超高齢社会を経験している日本の研究者として,国際的な場で研究活動や日本の老年看護の知見を発信し,共有していくことを大切にこれからもがんばっていきたいと思います.

IAGG参加報告書
大手前大学国際看護学部 倉木文
倉木文

 2023年6月に横浜で行われたThe International Association of Gerontology and Geriatrics Asia/Oceania Congress 2023に参加しました.国際学会へ初めて参加し,医学,看護学,社会科学など様々な分野からの研究発表や講演の触れることで,アジア・オセアニア地域の高齢化における課題やその取り組みについて知ることができ,視野が広がりました.

 会場ではフレイル,サルコペニアに関連する高齢者の生活上の問題についての講演や発表が多くありました.中でも印象的であったのが,日本でも多くの高齢者に行われている股関節骨折への治療とその後についての諸外国との違いでした.日本では手術後,骨折前の生活を目指して治療が行われています.しかし,アジア地域の国々の中には医療制度や治療に対する考え方の違いにより,ケアの連携不足から手術1年後の生存率が低く,5人中3人は骨折前の運動可能な状態に回復できない状況にあるとのことでした.高齢化が進む中,股関節骨折のみならず脆弱性骨折へのケアは,高齢者がその人の望む生活を維持するためには欠かせない課題であると再認識しました.

 今回,修士論文でまとめた認知症高齢者の低活動型せん妄への認知症看護認定看護師の看護実践についてのポスター発表をする機会を得ました.演題名は 「Nursing practice of certified nurses in dementia nursing for hypoactive delirium in elderly patients with dementia in general hospital setting」です.せん妄のサブタイプの中で低活動型せん妄は認知症やうつなどと判断がつきにくく,認知症高齢者が低活動型せん妄を発症した場合は,さらに見逃され介入につながりにくいとされています.発表内容については,そもそも低活動型せん妄がどのようなものであるか,認知症看護認定看護師ならではの看護実践がどのようのものであったのかについてのご質問をいただきました.また,臨床では低活動型せん妄を発症が疑われる認知症高齢者が介入されずにいることが多くあるとのご意見もいただきました.認知症高齢者の低活動型せん妄への看護実践については,さらに研究を進めていく必要があることを感じました.

 今回国際学会に参加して,高齢化における課題は認知症,フレイル,慢性的な疾患の管理など多岐にわたっているため,様々な分野の研究が参集し繋がることの意義を実感しました.障害や疾患とともに生きる高齢者とその家族がよりよく生きる生活をささえることができるように,看護の立場から情報を発信できるように努めていきたいと思いました.