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国際交流委員会から国際誌掲載論文のご紹介
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この企画は,本学会会員の皆様の看護実践や研究活動等に役立つと思われる国際誌掲載論文を紹介することを目的としています.高齢者の生活施設で勤務する看護師の団体であるAmerican Assisted Living Nurses Associationと老年看護の高度実践看護師の団体であるGerontological Advanced Practice Nurses Associationの公式雑誌であるGeriatric Nursing誌から1回につき3つの論文のタイトルと要旨を翻訳しご紹介します.ご紹介する論文はGeriatric Nursing誌の最新巻から,文化が類似していて,日本の実践・研究に参考にしやすいと思われる東アジア圏(日本,中国,韓国,台湾等)の著者の論文を主に選定します.
今後,2か月に1回程度ご紹介する予定です.会員の皆様に興味を持っていただけそうな論文を選んで紹介させていただきます.関心のあるテーマなどございましたら,お知らせください.

日本老年看護学会国際交流委員会

INDEX

Vol.12

1.調査研究

Mariana Fernandes,PhD, Matteo Antonucci,Sc, RN, Francesca Capecci, MD, Nicol Biagio Mercuri, MD, David Della-Morte, MD, PhD, ClaudioLiguori, MD, PhD. (2024).
Prevalence of sleep disorders in geriatrics: an exploratory study using sleep questionnaires
高齢者における睡眠障害の有病率:睡眠質問紙を用いた探索的研究
Geriatr Nurs, 2024 November–December; 60: 107-113.
URL: https://doi.org/10.1016/j.gerinurse.2024.08.032


要旨

 目的:この研究は高齢者における、性別と年齢を考慮した上で睡眠問題の有病率を調査することを目的とした。 方法:研究対象者は高齢者クリニックを入院している高齢者であり、睡眠の質、不眠、睡眠時無呼吸のリスク、過度な日中の眠気(excessive day time sleepiness:EDS)、レストレスレッグ症候群(RLS)、クロノタイプ(朝型・夜型の傾向)、抑うつ、そして認知機能を評価する質問票に回答した。 結果:対象者は58名(58.6%が女性、平均年齢77.36±6.07歳)であった。睡眠関連の訴えで最も多かったのは、睡眠の質の低下(36.2%)であり、次いで、睡眠時無呼吸のリスク(34.5%)、不眠症状(25.9%)、EDS(15.5%)、RLS(12.1%)であった。高齢の女性は男性よりも、不眠、睡眠の質の低下、抑うつを訴えていた。75歳の以上の人はそれ未満の人よりも多くの併存疾患を抱えており、睡眠時無呼吸のリスクも高かった。 結論:睡眠の問題は高齢者において高頻度であり、ウェルビーイングの改善や精神疾患、併存疾患の負担を軽減するためには、スクリーニングと治療が必要となる。


国際交流委員会からのコメント

 加齢に伴い睡眠が変化することはよく知られています。厚生労働省は「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf)を定め、睡眠の質の低下が様々な疾患の発症リスクを増加させ、寿命を短縮させることを指摘しています。 今研究では、睡眠の評価にピッツバーグ睡眠質問票、ベルリン質問票、エプワース眠気尺度、不眠重症度質問票、国際レストレスレッグ症候群評価尺度が使用されています。これらの評価尺度は、わが国においても高齢者の睡眠の評価を行う際の参考になると思います。


2.介入研究

Itxaso Mugica-Errazquin PhD, Jon Irazusta PhD, Maider Kortajarena PhD, Saioa Elosegi MD, Bei Wu PhD, Xiang Qi PhD, Ana Rodriguez-Larrad PhD, Chloe Rezola-Pardo PhD. (2024).
Maintaining daily living activities in older adults: The impact of a functional exercise program in long-term nursing homes. A single-group pre-post intervention
高齢者の日常生活動作の維持:長期介護施設における機能的な運動プログラムの効果 単一グループによる事前事後介入
Geriatr Nurs, 2024 November–December; 60: 215-224.
URL: https://doi.org/10.1016/j.gerinurse.2024.09.003


要旨

 目的:長期介護施設(LTNH)入所者の日常生活動作(ADL)の維持能力、身体機能、認知機能、生活の質、脆弱性について、機能に焦点を当てた多面的な運動プログラムの効果を評価することである。 方法:この多施設による単一グループの事前事後準実験研究にはスペインのジプズカ市の16のLTNHから148名の入所者が参加した。参加者は週2回、6か月間の多面的な運動プログラムに参加し、介入の前後で評価がおこなわれた。 結果:介入後、参加者は有意にADL能力を維持しており、身体機能や生活の質が向上し、フレイルが改善した(p < 0.05)。認知機能は改善傾向を示した。下位グループ分析では、人口統計学的変数や健康変数に一貫した改善がみられた。 結論:運動プログラムは、個人の特徴にかかわらず、LTNH入所者のADLを行う能力、認知機能、身体機能、生活の質を効果的に維持・向上させ、脆弱性を改善していた。この結果は、高齢者における全体的な機能とウェルビーイングを維持するための運動介入の重要性を示している。


国際交流委員会からのコメント

 長期介護施設入所者を対象にした、前後比較による運動プログラムの効果を評価した論文です。この研究で使用された運動プログラムは運動生理学の研究者の専門知識に基づいて設計されています。また、米国スポーツ医学会(ACSM)や世界保健機関(WHO)などの団体の勧告に沿ったものとなっています。6か月のプログラムのうち最初の3か月が筋力やバランスの向上を目指しており、筋力強化のためにBrzyckiの公式を用いて筋肉への負荷量を決定しています。詳しくは著者らの別の論文に記載されています(https://doi.org/10.1186/s12877-017-0453-0)。4か月目からは、機能強化のための運動を行っていました。 わが国の入所施設においても入所者の筋力維持等を考えるうえで有益な文献と思われます。


3.スコーピングレビュー論文

Xiaobo Kea & Vivian W.Q. Lou. (2024).
Social media and caregivers' well-being: A scoping review and future research directions
ソーシャルメディアと介護者のウェルビーイング:スコーピングレビューと将来の研究の方向性
Geriatr Nurs. 2024 November–December; 60: 326-337.
URL: https://doi.org/10.1016/j.gerinurse.2024.09.017


要旨

 高齢化社会の課題に対応するための介護支援に対する需要の拡大を受け、介護者のウェルビーイングは大きな社会的な関心事となっている。ソーシャルメディアは日常生活に実質的に広がっているため、介護者のウェルビーイングへのソーシャルメディアの影響はますます社会の注目を集めている。研究活動は活発であるが、ソーシャルメディアと介護者のウェルビーイングの研究は統合されておらず、研究者からはあまり注目されていない。このギャップを埋めるため、本研究は(PubMed, Web of Science, Scopus, and CINAHLの4つのデータベースを用いた)スコーピングレビューを通して、既存の知識を統合し、ソーシャルメディアとウェルビーイングの観点から介護者の研究を促すことを目的とする。40の論文からのレビューの結果は、ソーシャルメディアの利用が介護者のウェルビーイングに必ずしもポジティブでないことを示唆しており、有益な効果を得ると同時に悪影響を避けるための方法について、さらに理解するための研究を推奨している。


国際交流委員会からのコメント

 ソーシャルメディアと介護者のウェルビーイングの関連についてのスコーピングレビューです。インターネットなしでの生活が考えられなくなった現代において、介護者がどのようにインターネットの情報を利用しているのか理解を助ける論文となっています。介護者のニードとして、がん、慢性期の状態や複雑なケアに対する管理、アルツハイマー病や脳卒中からの認知症、自閉症スペクトラム障害、退役軍人のケアや終末期の支援などであったことが記載されています。また、利用しているソーシャルメディアはファイスブック、ツイッター、インスタグラムのほかブログやブログやチャット、、そして糖尿病、がん、終末期といった特定の状況に対するインターネット掲示板も使用されていることが報告されています。さらに、ソーシャルメディアの利用は介護者へのソーシャルサポートを促進させるとしており、DXを謳うわが国においても、介護者支援のためのサービス開発において有益な論文になると思われます。




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