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国際交流委員会から国際誌掲載論文のご紹介
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この企画は,本学会会員の皆様の看護実践や研究活動等に役立つと思われる国際誌掲載論文を紹介することを目的としています.高齢者の生活施設で勤務する看護師の団体であるAmerican Assisted Living Nurses Associationと老年看護の高度実践看護師の団体であるGerontological Advanced Practice Nurses Associationの公式雑誌であるGeriatric Nursing誌に加え,看護学全般の国際的な主要ジャーナルの一つであるInternational Journal of Nursing Studies誌から1回につき合計3つの論文のタイトルと要旨を翻訳しご紹介します.ご紹介する論文は両誌の最新巻から,文化が類似していて,日本の実践・研究に参考にしやすいと思われる東アジア圏(日本,中国,韓国,台湾等)の著者の論文を主に選定します.
今後,2か月に1回程度ご紹介する予定です.会員の皆様に興味を持っていただけそうな論文を選んで紹介させていただきます.関心のあるテーマなどございましたら,お知らせください.

日本老年看護学会国際交流委員会

INDEX

Vol.19

1.混合研究法システマティックレビュー

Family engagement in the medication management of older adults during transitions of care: A mixed methods systematic review
ケアの移行期における高齢者の服薬管理に対する家族の関与:混合研究法システマティックレビュー
Caitlin Deery, Grace Marconi, Kelly Ottosen, Kerry Hwang, Maneesh Prasad, Pauline Wong , Stephanie Garratt, Elizabeth Manias
International Journal of Nursing Studies, Vol. 174, February 2026, 105305
URL: https://doi.org/10.1016/j.ijnurstu.2025.105305


要旨

 背景:高齢者はケアの移行期において薬物有害事象を経験しやすいが、家族は薬物有害事象を軽減する助けとなり得る。
 目的:この混合研究法システマティックレビューは、ケアの移行期において、家族が高齢者の服薬管理にどのように関与しているかを明らかにすることを目的とした。
 方法:文献検索ではCINAHL、MEDLINE、CENTRAL、PsycINFO、Embase、International Pharmaceutical Abstractsの 6つのデータベースを用いた。質的、量的、混合研究法の研究を含めた。発行年が2018年以降の英語で記載された論文を対象とした。引用文献リストの手作業による検索と前方検索を行った。65歳以上の患者家族に焦点を当て、服薬管理、ケアの移行を含む論文を用いた。ThomasとHardenのテーマ分析を行った。量的データの不足を考慮しメタ分析は行わず、ナラティブ・サマリーを作成した。収束的分離統合を用いて、ナラティブに記述された量的データと質的データをそれぞれ独立に分析し、2つのテーマのセットが作成された。最終段階において、この2つのテーマの統合を行った。質評価には混合研究法評価ツールを用いた。
 結果:質的研究17件、混合研究2件、量的研究1件の計20論文が対象となった。(1)家族間の対人経験が服薬管理の関与に及ぼす影響、(2)安全なケア移行のための服薬関連行動に関する家族の視点、(3)家族、高齢者、ヘルスケアシステム間の不一致、(4)情報交換と服薬決定における家族の関与の相互作用、(5)服薬管理を改善する家族中心のアプローチ、の5つのテーマが抽出された。5つのテーマのうち1つは、量的データと関連がなく、質的なデータのみから抽出された。家族の関与は、疎外感、介護負担、高齢者本人が管理を手放すことへの抵抗が悪い影響を与えていた。情報交換は不十分なことが多く、服薬に関する医療者と患者のやり取りのうち、家族が関与していたのは17%にとどまった。家族は多職種連携や文書を含む構造的なコミュニケーションの重要性を強調していた。退院プロトコルは、再入院を4%減らし、服薬アドヒアランス(遵守率)の93%に寄与していた。
 結論:協力的な情報交換をしている家族は、家族の関与を肯定的に捉えていた。一方で、否定的な対人経験や専門用語の使用といったヘルスケアシステムとの不一致は、家族の関与を妨げる要因となっていた。面談時の家族の同席や文書は、戦略となることが確認された。しかし、家族中心の戦略についてはさらなる実践的な評価が必要である。


国際交流委員会コメント

 本研究は、ケアの移行期に服薬管理に対する家族の関与について調査した研究のシステマティックレビューです。高齢者の多剤併用が問題視されるわが国においても服薬管理は重要といえます。本研究では多職種の協働や文書を含む構造的なコミュニケーション、退院プロトコルの重要性を示しています。今後の家族への退院指導等に活用できる内容ではないかと思われます。
 また、本研究は混合研究法を用いた論文を含むシステマティックレビューとなっています。これまで質的研究のみのシステマティックレビューや量的研究のみのシステマティックレビューが発表されてきました。この方法では質的研究と量的研究の双方を取り扱うことができるようです。新たなシステマティックレビューの方法を知るのに参考となる文献と思われます。


2.質的研究

Family caregivers at the crossroads - considerations, values and the decision to involve volunteers in end-of-life home care: A qualitative study
岐路に立つ家族介護者―在宅でのエンド・オブ・ライフケアにおけるボランティアの受け入れに対する考え、価値、意思決定:質的研究
Carolien van Leussen, Thessa Thölking, Els van Wijngaarden
International Journal of Nursing Studies 172, December 2025, 105206
URL: https://doi.org/10.1016/j.ijnurstu.2025.105206


要旨

 背景:患者が自分の家で死にたいという望みを叶えるためには、家族による介護が必要不可欠であることが多い。家族はこの役割を義務として経験することもある一方で、やりがいを見いだすことも多い。しかし、介護は負担であり、特に生命の最終段階においては、介護負担は増大し、ときに予定外の再入院を招くことがある。このような状況において、ボランティアは、家族介護者が介護を継続するための極めて重要な支援を提供できる。
 目的:本研究は、介護者がボランティア支援を受け入れるか否かを判断する際の考えや根本的な価値を検証することを目的とした。
 方法:現象学的研究アプローチで、自宅でのエンド・オブ・ライフケアにおいてボランティアの支援を受け死亡した患者の22名の家族介護者(パートナーや子供)にインタビューを実施した。多様性を確保するために、合目的的サンプリングにより対象者を選定した。選定基準は、過去1年以内に、自宅で亡くなった愛する人の生命の最終段階において密接な関わり合いをもっていたことである。インタビューの内容について、Atlas.tiを用いたテーマ分析を実施した。その後、介護者の語りを文脈化するため、データを複合的ナラティブに統合した。このナラティブは、特にボランティア参加の選択肢を紹介する地域看護師、一般開業医といったヘルスケア専門職にとって研究結果の理解しやすさを高めた。
 結果:家族介護者のボランティア支援に対する考えは複雑かつ多面的であった。介護へのコミットメントは非常に強く、ボランティアの支援を受け入れることはしばしば自分の介護の失敗と捉えられていた。この認識は、介護期間の見通しがたたないことや、生活空間が次第に狭まっていくことで強まり、それは家族介護者と患者の絆を深めていた。感情的、身体的負担が増大する一方で、介護者はしばしば患者の同意がないまま行動することに躊躇し、自身の限界を認めることに苦慮していた。患者とできるだけ多くの時間を過ごしたいという思い、最後の瞬間に立ち会いたいという願いが、ボランティアの受入れの意思決定プロセスをより複雑にしていた。こうした過程において、ヘルスケア専門職は、ボランティアの支援についての対話を促す中枢的な役割を果たしていた。
 結論:この研究は、家族の生命の最終段階において、ボランティアの支援を受け入れるかどうかを決めるプロセスで直面する個人の複雑な思いを明らかにした。義務という強い意識や時間を共有するという価値によって、介護者は自身のニードよりも介護を優先してしまい、疲労を感じ、外部支援を求めることに消極的になっていた。ボランティアの支援の導入は有益である一方で、介護者に能力不足の感情を喚起することもあるため、ヘルスケア専門職は、感情や家族間のダイナミクスに配慮してこれらの状況へ臨む必要性を明確に示している。


国際交流委員会コメント

 本研究は、65歳から96歳の方々の自宅でのエンド・オブ・ライフケアにおいて、ボランティアによる支援を受けたご家族の考えや価値、意思決定についての質的な研究です。本研究は「患者の孤独への恐怖」「自宅で死にたいという患者の明確な希望」といった10のテーマを4つの統合したナラティブとして紹介しています。
 多死社会の到来により、わが国では医療機関での看取りから自宅での看取りへとシフトチェンジしています。医療施設でのホスピスボランティアの活躍が紹介されている一方で、自宅での看取りが多くなると、本研究のように地域におけるボランティアの存在に注目が集まるかもしれません。わが国の将来のエンド・オブ・ライフケアにおいて貴重な研究といえる内容だと思います。
 なお、本研究で使用されたAtlas.tiは、質的研究を支援するソフトウェアです。メニューなどのインターフェイスは英語ですが、日本語テキストの処理や解析が可能なソフトウェアだそうです。2022年の荒木先生のご研究では、NVivo、MAXQDAに次いでわが国で3番目に多く利用されているソフトとされています。
 (荒木田美香子,豊増佳子,仲野宏子.(2022).質的研究における質的データ分析ソフトウェアの活用状況の実態. 日本看護研究学会雑誌, 45(2), 2_201-2_212.
https://doi.org/10.15065/jjsnr.20220411159


3.量的研究

Psychometric properties of the brief sense of community scale for urban-dwelling older adults
都市在住の高齢者における簡易コミュニティ感覚尺度の心理測定特性
Max Bloem, Jane Murray Cramm, Anna Petra Nieboer
The Gerontologist, Volume 65, Issue 12, December 2025, gnaf239
URL: https://doi.org/10.1093/geront/gnaf239


要旨

 背景と目的:人口の高齢化と多様性が進む中、高齢者のコミュニティ感覚に対する理解はウェルビーイングを促進するために非常に重要である。本研究はオランダ・アムステルダム在住のオランダ人または移民の背景を持つ高齢者における簡易コミュニティ感覚尺度(Brief Sense of Community Scale:BSCS)の妥当性を検証することを目的とする。
研究デザインと方法:65歳以上の代表的サンプル862人がBSCSに回答した。対象者は、300名のネイティブオランダ人(34.8%)、211人のトルコ系オランダ人(24.5%)、200人のスリランカ系オランダ人(23.2%)、151人のモロッコ系オランダ人(17.5%)であった。心理測定特性は、確立されたコミュニティ感覚の理論的枠組に基づき、性別や民族を超えた内的一貫性、因子妥当性、測定不変性の分析により評価した。
 結果:確証的因子分析により、第1階層と第2階層のBSCSの4因子モデルが良好なモデル適合度であることが示された。第2階層4因子モデルにおいて、CFIは0.97、RMSEAは0.06であり、SRMRは0.027であった。尺度全体において強固な内的一貫性を示し(クロンバックのα=0.88)、下位尺度の内的一貫性は0.64から0.88の範囲であった。測定不変性の評価によって形態不変性、計量不変性、尺度不変性、および(性別に関する)厳密不変性が確認され、BSCSが性別およびオランダの4つの大きな民族集団間で等しく機能することが示された。これらの結果は、多様な高齢者集団において、尺度の構造的妥当性や民族間での比較可能性を示している。
 考察と提言:BSCSはネイティブ高齢者と移民の高齢者の双方において信頼性と妥当性の高いコミュニティ感覚の測定用具である。また、多文化的な都市環境における社会的な繋がりやウェルビイングウェルビーイングの向上を目的とする調査、政策、取り組みに対する価値ある示唆を提供する。


国際交流委員会コメント

 本研究はオランダにおける高齢者のコミュニティ感覚を測定する簡易尺度の信頼性、妥当性を検証した研究です。コミュニティ感覚はMacMillanとChavis(1986)によって、「メンバーが持つ所属感、メンバーがメンバー同士、あるいは集団に対して持っている重要な感覚、また、集団にともにコミットメントすることによってメンバーのニーズを満たすことかできるという信念の共有」と定義されています(https://doi.org/10.1002/1520-6629(198601)14:1%3C6::AID-JCOP2290140103%3E3.0.CO;2-I)。高齢者がその人らしく地域で生活することは重要である一方で、地域での社会的な繋がりの希薄化によりインフォーマルな繋がりが機能しにくくなっています。高齢者が地域で生活する上で、鍵となるのが地域住民のコミュニティ感覚かもしれません。
 本研究によって開発された尺度は「ニーズの充足」(1.この地域で必要なものは手に入れることができる。2.この地域は私のニーズを満たすのに役立つ。)、「メンバーシップ」(3.この地域の一員だと感じられる。4.私はこの地域に属している。)、「影響力」(5.地域で起きている事について発言権がある。6.この地域の人々は互いに影響を与え合うのが上手だ。)、「情緒的結合」(7.この地域とのつながりを感じる。8.この地域の人々と良好な絆を築いている。)の4因子8項目の尺度です。本尺度のように簡単にコミュニティ感覚を測定できる尺度はわが国においても有益かもしれません。